アルバイトArbeit、リュックサック Rücksack、ウィンナー・コーヒー Wiener Kaffee、カルテKarte…知らず知らずのうちに、日本に暮らす私たちは、日常的に様々な場面でドイツ語を使っています。しかし、日本からフランクフルトまで、飛行機ですら、10時間以上かかります。お世辞にも近いとは言えない中央ヨーロッパに位置する国々の言語――ドイツ語は、おもにオーストリア、ドイツ、スイスで話されています。ドイツの人たちは旅行好きなせいか、近隣諸国の観光地などでも、ドイツ語はよく通じます――であるドイツ語が、どうしてこれほどまで多彩なジャンルで、日本語に浸透しているのでしょう? |
こうしたことから、ドイツ語の授業では、ドイツ語文法や語彙だけではなく、文化や歴史についても同時に学ぶことで、ドイツ語の知識と技能、そして興味関心を幅広く涵養します。映像資料等も用いながら、ドイツ語の発音を毎回・繰り返しおこなうことで、綴りと音の結びつきを意識させ、じっくりと、着実に学んでいきます(語学に焦りは禁物です)。前期は、食文化を中心に紹介しています。
授業の目標は、卒業旅行などでドイツ語圏を訪れた際、レストランやカフェで、ドキドキしながらドイツ語で注文と支払いを済ませ、近くの席の人とドイツ語で簡単な雑談をする(ドイツでは、相席の機会も多いです)。そして、「どこでドイツ語を学んだのですか? とてもお上手ですね!」と褒めてもらい、「日本の大学で1年間、週に1回、勉強しました!」と、返答できるようなレベルに到達することです。2年間勉強した人には、ドイツ語技能検定試験4級へのチャレンジを積極的に支援していきます。
実際のところ、語学は「楽しい」ですが「ラク」ではありませんし、上達しようとすると、地味な作業も多くて辟易することもあります。けれども、現地の人と、その土地の言葉で直接やり取りできたときの深い歓びは、何物にも代えがたいものであり、苦労する甲斐があります(現地で外国人や「移民の背景を有する人びと」などとドイツ語で話すのも、日本では得難い体験です)。また、新しい言語の修得は、「○○語を喋る自分」という、新たな自分に出会う機会をももたらします(こんな風に話すのか…と自分で自分に驚くことがあります)。そして、まったくドイツ語ができなかった人たちが、勉強を通じて少しずつ読み書きし、会話できるようになる姿を目の当たりにしていると、「人間の可能性」というものを感じずにはいられません。ドイツ語でなくても構いませんが、外国語学習を通じて、一人でも多くの学生にそうした経験をしてみてほしいと、強く願っています。
この授業を通じて、学生のみなさんが、ドイツ語圏の文化・社会・歴史などに関心が芽生え、卒業後もドイツ語圏と関わりつづけたい、ドイツ語を勉強しつづけたいと思ってくれて、気が向いたときに大学へ近況報告のために立ち寄ってくれる日が訪れることを、心待ちにしています。